箱庭療法という心理療法

日本の箱庭療法

 

1965年、河合隼雄によって日本に初めて紹介された箱庭療法は、最初は天理市と京都市に導入されることになりました。そこで実践されると同時に、箱庭療法に関する多くの研究も、京都大学の河合隼雄や、山中康裕、岡田康伸などを中心に行われることになります。

 

その後は一つの大学にとどまらず、他の大学においても活発な実践や研究などが行われるようになり、次第に日本全国へと広がっていき、臨床場面においても幅広く使用されるようになっていったのです。

 

箱庭療法においては、箱庭の枠というものが非常に重要な要素となっています。統合失調症の治療で有名な精神科医であり、日本独自の風景構成法を考案した中井久夫は、東京での河合隼雄の箱庭に関する発表を聞き、箱庭に枠が使用されている点に注目しています。そして、箱庭にこの枠があるために患者は箱庭による自己表現が可能であり、治療効果があることに気づいたといわれています。

 

中井久夫は、紙の縁を枠として考え、治療者が枠をハンドライティングで描くという、自身の風景構成法の「枠付け法」にこれを応用し、中井自身や山中康裕などの医療系の精神科医が箱庭療法を病院に持ち込んだことで、箱庭療法が教育現場だけでなく、病院の臨床の場でも使用されるようになっていったのです。現在、この箱庭療法は、病院や学校などの心理相談室、心理療法一般、そして少年鑑別所などの機関で使用されています。